気分障害を抱える患者は年々増えている
皆さんはうつ病の方が増えていると思いますか? それとも、減っていると思いますか? 昨今のニュース等を考えると明らかに「減っている」という雰囲気はありません。では、増えているとすれば、どれぐらい増えているのでしょうか? 正解は、「20年間でだいたい倍増」です。以下のグラフは厚生労働省が3年ごとに行っている『患者調査』の結果をまとめたものです。うつ病などの「気分障害」によって病院やクリニックを訪れる、もしくは入院している患者の数(推計)が、1996年から右肩あがりに増え続けているのがわかります。
ちなみに、全ての病気を含めた入院・外来の合計患者数(推計)は若干上下しつつもほぼ横ばいですから、ここ最近でうつ病に悩む方がどんどんと増えてきているのがわかるかと思います。
実際私の周囲でも、友人や仕事関係の方、さらに知人の家族等まで含めれば両手の指に届くほどの方がこの10年でうつ病や適応障害と診断されています。それほど、うつ病は一般的な病気になりつつあるのかもしれません。
今まさにうつ状態に苦しんでいる方、そして身近な人がうつに苦しんでいるという方は、それが決して自分だけではないことを知ってください。それだけで少しだけ、心が楽になるかもしれません。
うつ病患者と受診患者の割合
うつ病に悩む方の多さに関して、さらに驚くべき調査結果があります。ファイザー株式会社の「こころの陽だまり」というサイトでは、20〜75歳までの日本人のうつ病の有病率を【5.7%】と記載しています。つまり20人集まれば1人から2人は生涯でうつ病にかかってしまう、というわけです。
●こころの陽だまり「教えて 〜うつ病〜」
https://www.cocoro-h.jp/untreated/tell_utsu/
ところが、これだけ患者数が増えているにも関わらず、相談・受診をためらう方が多いのもうつ病の特徴です。書籍『六番町メンタルクリニック所長 野村総一郎監修 うつ病のことが正しくわかる本』(西東社 2016年発行)によれば、過去にうつ病などを経験した人の中で医療機関の相談・受診経験があるのは、【36.3%】に過ぎないというのです。
私自身は医療機関で診察を受け、投薬治療を行うことで症状が大きく改善しました(3年経った今でも寛解はしてはおりませんが……)。もちろん「医療機関に相談してもよくはならなかった」という方がいらっしゃるのもわかります。しかし、「医療機関に行かずに悩み続ける」ことだけはやめてください。
そもそも医療にとって「患者が多い」ということは「情報が多い」ということです。情報が多ければ多いほど治療法や対処法は蓄積されていきます。もし出された薬が合わなくても、薬を使わない治療法や、あなたに合う薬があるかもしれません。一人目の先生が合わなくても、他の先生なら合うかもしれません。「まずは一歩踏み出して診察を」。自分の経験からも、そう私は強く思います。